親知らず抜歯の終わりに

かんかんかんかんかんかん
みしみし...みしっ

頭の中にこんな音が響いたことがいまだかつてあっただろうか。

あごをもっと開けろと歯科医に半ば怒られつつ、思っていたよりはとてもスムーズに、わたしの親知らずは抜かれていった。

かわいそうな親知らずちゃん。
26歳になってもずーっと、歯ぐきの中でおとなしく眠っていたのに、急に引きずり出されて驚いたことだろう。

そのショックの余韻は鈍く右頬に残っている。ロキソニンをいそいそと飲むわたし。いつまでこんな痛みを抱えていなければならないんだろうなぁ、とゆううつな気持ちだ。


唐突だけど。『マチネの終わりに』を昨日読んだ。
読み終わった感想は、
「お、大人の恋だ...」
20代半ばの未熟者にはなかなか重たいテーマ。登場人物が30代後半〜40代だもんね。
あ、ネタバレ嫌な人は読まないでくださいね。



基本的にすれ違いものというのは苦手である。作中にも出てくるが、運命論よりも個人の自由意志というものを信じるならば、過去に対して「ああすればよかった、こうすればこうならなかったのに。」という気持ちが当然生まれてくる。こうなったのは運命だ、仕方ないとは思えない。
そして勘違いによるすれ違い、誤解、というものはあとからわかったときに「こうすればよかった」と思うことの最たるものだと思う。

その感覚がめちゃくちゃ嫌いなのだ。
あとでそう思わないように、後悔しないように、何があっても大切なものからは手を離さないようにしようというのがわたしの密かなるモットーである(いまはじめて明文化したけど。)

だから結婚だけが、2人でずっと一緒にいることだけが愛じゃないなんてわかるけど、言いたいことはわかるけど、そうかもしれないと思うけど、やっぱり嫌だというのが素直な感想です。笑

ただ、運命論と自由意志の話はすごくおもしろいと思って。
どうして自分にこういうことが起こるのか。運命なのか、自分の選択の結果なのか。どうしようもなかったのか。
そういうことって誰でも考えると思う。

わたしはおそらく、運命論を下敷きにした自由意志論者(いいとこ取りずるい)。

あのときのあの出来事が、いまにつながっているんだ。と意識することがよくあって。
いちばんよく思うのは、大学受験の結果に納得がいかず、進学の選択肢を捨てて浪人までし、結果的に行きたいところにはいけなかった。でもそこで出会った学問に価値観の影響を受けて、いまのわたしがいるとか。

そこでできた友人とは、違う大学に行ってれば知り合うことすらなかったはず。
めぐりめぐって、大切な人に出会えたのもいろいろな偶然が重なっていると思う。

いまの仕事のこととか、あげたらキリがないよね。

そしてこういうことを考え出すと、あまりにも世の中には不確定要素がありすぎて、あまりにも選択肢がありすぎてちょっとは運命が噛んでおいてくれないと世の中回らないよ。みたいな気分になる。大量の選択の積み重ねの結果、いまのわたしがあるなら、わたし頑張りすぎでしょ。とね。
だから下地は運命論者なのかなぁと思う。

ただここでわたしお得意の反骨心ですよ。
なに?全部運命なの?どんなに頑張っても結果は変わらないの?わたしの意思を無視すんな!
とも思うわけで。

そこで、この本のメインテーマである「未来はつねに過去を変えている」という言葉は、運命的ななにかに流されているかもしれないわたしたちに希望を与えてくれるんだー。

運命によって起こったかもしれない過去の出来事は、未来に起こることによって違ったものに変質する。
運命論は結局、過去の出来事にしかあてはめられないけれど、未来を選び取るという意志があれば過去も変わるかもしれない。

この本は、序章においてこれは実話をもとにしてますなんてことをご丁寧に書いてくれている。すべて書き終わったあとにこの章を書き加えましたと。
わたしの推測に過ぎないけれど、ラストの穏やかで美しくて、でも小さな痛みもかすかに感じるようなシーンにどこか「希望」を感じさせたかったんじゃないかなぁ。
この本を読み終わった私たちは、過去は変えられるということは知っているから。
2人が最後に出会ったあと。物語の続きを、2人の未来を想像させることでその可能性を見せてくれたんじゃないだろうか。





というわけで、親知らずを抜く前の「親知らず抜いて気絶したらどうしよう」「顔面麻痺が残ったりとか...」みたいな過去の心配は、無事に笑い話に変わりましたとさ。

もう1本抜くので、油断しないぞ。




色々と思うことはあれど。

ブログを書こうとしても、いつもいつもちゃんと良い感じに書かなきゃという気持ちになってしまい、自分の重荷になり、結局書かないのである。

本ブログはそんなわたしが自分のごちゃごちゃもやもやした思い、考え、ただしゃべりたいことなどをがんばって文章化していくブログです。